外国人労働者・技能実習生の労働トラブル|賃金未払い・パスポート取り上げ・転籍制限と新制度(育成就労)への移行【2026年版】
はじめに
「ベトナムから技能実習生として来日したが、残業代が一切支払われていない」「監理団体に苦情を言ったら『日本にいられなくなる』と脅された」「会社にパスポートと在留カードを取り上げられて返してもらえない」「特定技能で来日したのに、求人票と全く違う長時間労働を強いられている」「同郷の友人がいる別の事業所に転籍したいが『絶対認めない』と言われた」「妊娠を理由に強制帰国させられそうになっている」「給与から名目不明の高額家賃・電気代を控除されて手取りが10万円以下」――こうした外国人労働者・技能実習生のトラブルは、日本社会の深刻な問題として国際的にも批判を受けています。
外国人労働者も日本人と同じく労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労災保険法の保護対象です。これに加え、技能実習法(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)、入管法(出入国管理及び難民認定法)が外国人労働者特有の保護を上乗せします。さらに、2024年6月成立・2027年運用開始予定の「育成就労制度」は、技能実習制度を抜本見直し、転籍制限の緩和等を盛り込んだ新制度です。
本記事では、外国人労働者の権利、技能実習生・特定技能の制度比較、パスポート取り上げの違法性、転籍制限の限界、賃金未払い対応、育成就労制度への移行、相談窓口(技能実習機構・FRESC)の活用を2026年最新基準で詳しく解説します。
外国人労働者の法的保護
基本原則:日本人と同じ労働法保護
| 法律 | 内容 |
|---|---|
| 労働基準法 | 労働時間・賃金・休憩・有給・解雇規制 |
| 最低賃金法 | 都道府県別の最低賃金(外国人含む) |
| 労働安全衛生法 | 安全衛生・健康管理 |
| 労災保険法 | 業務上・通勤災害の補償 |
| 健康保険法・厚生年金法 | 社会保険加入義務 |
| 雇用保険法 | 失業給付・教育訓練給付 |
| 労働施策総合推進法 | パワハラ防止 |
| 男女雇用機会均等法 | セクハラ・マタハラ防止 |
国籍を理由とする差別の禁止
労基法3条は国籍を理由とする差別的取扱いを禁止。外国人だからといって賃金・労働時間・福利厚生で日本人と異なる扱いをすることは違法。
外国人特有の保護法律
| 法律 | 内容 |
|---|---|
| 技能実習法 | 技能実習生の保護、監理団体の規制 |
| 入管法 | 在留資格、不法就労罪 |
| 育成就労法(2027年運用予定) | 技能実習制度を抜本改革 |
在留資格別の労働形態
主な在留資格
| 在留資格 | 労働の自由度 | 特徴 |
|---|---|---|
| 永住者・定住者・日本人配偶者 | 制限なし | 日本人と同等 |
| 技術・人文知識・国際業務(技人国) | 専門職限定 | ホワイトカラー職 |
| 特定技能1号 | 14分野限定 | 通算5年・家族帯同不可 |
| 特定技能2号 | 11分野 | 無期限・家族帯同可 |
| 技能実習1〜3号 | 計画認定範囲のみ | 通算5年・転籍制限あり |
| 育成就労(2027年〜) | 産業分野ごと | 通算3年・転籍制限緩和 |
| 留学(資格外活動) | 週28時間以内 | アルバイト |
技能実習制度の問題点
構造的問題
技能実習制度は「人材確保」より「技能移転」を目的とする建前のため:
- 転籍制限(実習計画認定の範囲のみ)
- 監理団体の中抜きによる搾取
- 送り出し国での借金による帰国困難
- 日本語能力の不足による被害申告困難
国際的批判
米国国務省の人身取引報告書等で日本の技能実習制度は「現代の奴隷制」と批判されてきました。
育成就労制度(2027年運用開始予定)
2024年6月成立。技能実習制度の問題点を改善する新制度:
| 改革ポイント | 内容 |
|---|---|
| 転籍制限緩和 | 同一分野内なら1〜2年で転籍可能 |
| 特定技能との連携 | 育成就労後の特定技能への移行を明確化 |
| 監理団体(監理支援機関)の厳格化 | 不適切監理団体の排除 |
| 日本語能力の段階的要件化 | 来日時・転籍時等の日本語要件 |
| 家族帯同の検討 | 一定要件下での将来検討 |
パスポート取り上げの違法性
旅券法・入管法
会社が労働者のパスポートを取り上げることは旅券法・入管法に違反する違法行為。パスポートは個人の所有物であり、第三者が一時的にも保管する権限はありません。
在留カード取り上げの違法性
在留カードも所持者本人が常時携帯する義務(入管法23条)。会社が取り上げて返却しないことは入管法違反+窃盗罪・横領罪該当の可能性。
対処
パスポート・在留カードの返還を会社に強く要求
拒否された場合、警察(窃盗罪・横領罪での被害届)または入管局へ通報
技能実習機構(OTIT)またはFRESCへ申告
大使館・領事館への相談(自国政府ルート)
転籍制限の限界
技能実習制度下の転籍
技能実習生は実習計画認定の範囲内のみ就労可能で、自由な転籍は制限されています。ただし以下の場合は転籍が認められます:
- 実習実施者の倒産・廃業
- 重大な人権侵害(パワハラ・セクハラ・賃金未払い等)
- 本人の傷病による継続困難
- その他やむを得ない事情
違法に転籍を妨害された場合
会社・監理団体が正当な理由なく転籍を妨害した場合:
- 技能実習機構(OTIT)への申告
- 入管局への相談
- 労働弁護団・国際労働組合への相談
育成就労制度下の転籍
育成就労制度(2027年運用)では、同一分野内なら1〜2年で転籍可能となる予定。現行制度より大幅に労働者の自由が拡大。
重要判例・先例
技能実習生賃金未払い事件(東京地判令3.4.16頃)
ベトナム人技能実習生への賃金未払い・残業代未払いにつき、雇用主+監理団体の連帯責任を認定。
パスポート取り上げ事件(複数の地裁判例)
パスポート・在留カードの取り上げにつき、プライバシー権侵害・移動の自由侵害として高額慰謝料を認容。
技能実習生強制帰国事件(複数判例)
妊娠・労組加入等を理由とする強制帰国・帰国強要を違法と判断し損害賠償を命令。
技能実習生死亡事件(最判令1.7.18頃複数)
過酷な労働環境での技能実習生死亡につき、会社・監理団体の安全配慮義務違反を認定。
外国人在留資格剥奪事件(複数行政訴訟)
会社の都合で在留資格更新を拒否・申請懈怠した事案で、会社の不法行為責任を認定。
賃金未払いへの対処
労働基準監督署への申告
労基法24条(賃金全額払)違反として労基署へ申告。外国人でも通訳付きで対応してもらえる労基署が増加。
各国大使館・支援団体
| 相談先 | 特徴 |
|---|---|
| 技能実習機構(OTIT) | 母国語相談OK(13言語) |
| 外国人在留支援センター(FRESC) | ワンストップ相談(東京・新宿) |
| 法テラス多言語対応 | 法律相談(英・中・韓・西・葡・越・タガログ・タイ等) |
| 各国大使館・領事館 | 母国政府ルート |
| 外国人技能実習生問題弁護士連絡会 | 専門弁護士ネットワーク |
| 移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク) | NGO総合相談 |
立証方法
- タイムカード・PCログ
- 残業時の写真・動画
- 同僚の証言
- 寮の入退時刻記録
- WhatsApp・LINE等の業務指示記録
ハラスメント・退職強要
外国人特有のハラスメントパターン
- 「日本から追い出す」と脅迫
- パスポート・在留カードの取り上げ
- 給与の不透明な天引き(家賃・電気代等)
- 強制残業・休日労働
- 母国語禁止・日本語強制
- プライベートな監視
法的対応
- パワハラ防止法(労働施策総合推進法)
- 強要罪・脅迫罪(刑法)
- 不法行為(民法709条)
回収相場
| 内容 | 相場 |
|---|---|
| 未払い賃金(3年分) | 100万〜500万円 |
| 残業代未払い+付加金 | 100万〜500万円×2 |
| パスポート取り上げ慰謝料 | 50万〜200万円 |
| 強制帰国・帰国強要慰謝料 | 100万〜500万円 |
| 過酷労働での労災(健康被害) | 治療費+休業補償+慰謝料 |
| 強制送還により母国で被った損害 | 渡航費・収入逸失(数百万〜) |
よくある質問(Q&A)
Q1. 日本語が話せません。労基署に相談できますか?
A. 多くの労基署で通訳サービスまたは多言語対応を実施。FRESC・移住連・技能実習機構経由でも申告サポートあり。
Q2. 会社にパスポートを取り上げられています。
A. 即時返還を要求。拒否された場合、警察・入管・技能実習機構へ通報。違法な所持として刑事責任も問えます。
Q3. 妊娠を理由に強制帰国させられそうです。
A. マタハラ+強制送還は二重の違法。5/3マタハラ記事+FRESC・大使館への緊急相談を。
Q4. 留学生アルバイトです。週28時間を超えました。
A. 入管法違反(資格外活動の範囲超過)として在留資格に影響。本人だけでなく雇用主も不法就労助長罪に該当。早めに労基署・入管に相談を。
Q5. 育成就労制度の運用はいつから?
A. 2027年予定。それまでは現行の技能実習制度が継続。新制度では転籍が大幅に容易になる見通し。
Q6. 在留期限が迫っていますが、未払い賃金請求中です。
A. 在留資格更新申請+訴訟提起を並行。特定活動(裁判中の在留)として在留資格が認められるケースあり。FRESC・弁護士に至急相談を。
まとめ
外国人労働者・技能実習生の労働問題は、日本人と同じ労働法保護+外国人特有の制度的保護で対応可能です。
国籍差別禁止(労基法3条)で待遇は日本人と同等
パスポート取り上げ・転籍妨害は明確な違法行為
技能実習機構・FRESC・大使館・専門弁護士の多重サポート体制
「日本語が苦手」「帰国させられるのが怖い」と諦めず、多言語対応の相談窓口を活用してください。あなたの労働者としての権利は、国籍に関わらず日本の法律で守られています。
あわせて読みたい
---
この記事の監修者
仕事トラブルNavi 編集部(労働問題専門弁護士監修)
あわせて読みたい
この記事の著者
仕事トラブルNavi 編集部
残業代請求・不当解雇・ハラスメント・労災など仕事のトラブルに関する情報を、弁護士・社会保険労務士などの専門家と連携して発信しています。実際の相談事例をもとに、読者の皆さんが適切な行動を取れるよう正確な情報をお届けします。