不当解雇2026年5月13日

解雇予告手当(労基法20条)を支払わない解雇は違法|即日解雇・30日前予告なしへの対処と請求方法【2026年版】

はじめに

「ある日突然、上司に呼ばれて『明日から来なくていい』と即日解雇された」「30日前の予告もなく解雇通知書を渡された」「解雇予告手当を払うと言われたのに振込されない」「『懲戒解雇だから予告手当は不要』と主張されている」――こうした解雇予告・予告手当のトラブルは、不当解雇問題の中でも特に多く発生する類型です。

労働基準法20条は、使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前にその予告をするか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことを義務付けています。違反は刑事罰(6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金/119条)の対象であり、訴訟では付加金(同額)まで命じられる可能性があります。

本記事では、解雇予告制度の法的枠組み、解雇予告手当の計算方法、除外認定の限界、即時解雇の有効性、未払い賃金請求との関係、刑事告訴・労基署申告の活用を2026年最新基準で詳しく解説します。

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解雇予告制度の法的根拠

労基法20条1項

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。

趣旨

突然の解雇は労働者の生活・転職活動に重大な打撃を与えるため、最低30日の猶予または金銭補償を強制する規定。労基法上の強行法規で、当事者の合意でも排除できません。

違反の効果

| 効果 | 内容 |

|---|---|

| 刑事罰 | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1号) |

| 付加金 | 訴訟で未払予告手当と同額の付加金(労基法114条) |

| 解雇の有効性 | 通説・判例は予告違反でも解雇自体は有効(細谷服装事件・最判昭35.3.11)。ただし選択権は労働者に。 |

解雇予告手当の計算方法

基本式

解雇予告手当 = 平均賃金 × 30日分(または不足日数分)

平均賃金の算定(労基法12条)

直近3ヶ月の総賃金÷総暦日数

最低保障として「直近3ヶ月の総賃金÷総労働日数×60%」を下回らない、との規定もあります。

計算例

月給30万円・直近3ヶ月の総支給額95万円・暦日数91日の場合:

  • 平均賃金=950,000÷91=10,440円
  • 解雇予告手当=10,440×30=313,200円

一部予告の場合

例:解雇日の10日前に予告された場合 → 不足の20日分を予告手当として請求可能(労基法20条2項)。

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解雇予告手当が不要となる例外

例外①:天災事変その他やむを得ない事由

地震・火災等による事業継続不能の場合。ただし労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)が必要で、認定は厳格。経営悪化は原則該当しません。

例外②:労働者の責に帰すべき事由

横領・重大な業務違反等。同じく労基署長の除外認定が必要。「責に帰すべき事由」の解釈は厳格で、軽微な過失や能力不足は通常該当しません。

例外③:解雇予告除外認定の運用

労基署は次の場合のみ除外認定をします。

  • 故意の重大な不法行為(横領・暴行等)
  • 2週間以上の正当な理由なき欠勤
  • 重大な経歴詐称
  • 雇入後数日中の判明する不適格者

「業務命令違反」「協調性欠如」程度では除外認定されません。

例外④:適用除外労働者(労基法21条)

| 種類 | 適用除外期間 |

|---|---|

| 日々雇い入れられる者 | 1ヶ月以内に限り |

| 2ヶ月以内の期間を定めた者 | 雇用期間内に限り |

| 季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めた者 | 雇用期間内に限り |

| 試用期間中の者 | 14日以内に限り |

試用期間中でも14日経過後は予告義務が発生します。

重要判例

細谷服装事件(最判昭35.3.11)

予告手当不払いの解雇でも、解雇自体は有効。労働者は①予告手当を請求するか、②解雇無効を主張するかの選択権を有する。

大東職業安定所事件(最判平4.10.13)

予告除外認定の有効性につき労働者は争うことが可能との立場を確立。

NEXX事件(東京地判平24.2.27)

「即日解雇」を通告した会社に対し、予告手当+付加金で約60万円の支払命令。

サンライズグループ事件(東京地判令1.10.16)

懲戒解雇を主張する会社に対し、予告除外認定なしを理由に予告手当の支払を命令

慶熙学園事件(東京地判平20.9.30)

不法行為に該当する事由がなければ予告除外認定の根拠なしとして予告手当支払を命令。

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解雇予告と解雇有効性の関係

二段構えの戦略

予告手当不払いの解雇に対し、労働者は次の2つの主張を選択または主位・予備の関係で展開できます。

①予告手当請求(解雇は有効と扱う):迅速回収、最低30日分賃金確保

②解雇無効主張(地位確認+バックペイ):解雇自体を覆し復職または高額補償

主位・予備の組み合わせ

労働審判・訴訟では:

  • 主位請求:解雇無効+地位確認+未払い賃金
  • 予備請求:予告手当+付加金

と組み合わせることで、勝てる方を採用できます。

即時解雇の有効性

「即日解雇」が無効になる場合

| 状況 | 効果 |

|---|---|

| 予告手当を支払わず即日解雇 | 通知から30日経過時に解雇効力発生(判例多数) |

| 一部のみ予告手当支払 | 不足分支払日まで解雇効力延期 |

| 予告除外認定なしで即時解雇 | 30日経過まで解雇効力発生せず=30日分の賃金請求可 |

30日分の賃金請求

「即日解雇」を主張する会社に対し、通告日から30日間労働契約継続中として賃金請求が可能です(細谷服装事件の射程)。

退職勧奨と解雇の区別

会社が「解雇」と「退職勧奨」を曖昧にしてくる場合があります。書面の文言・本人の意思で判断:

  • 「明日から来なくていい」(一方的)→ 解雇=予告手当の対象
  • 「辞めてくれないか」(合意打診)→ 退職勧奨=予告手当の対象外

退職届に署名する前に必ず確認を。一度退職届を出すと「自己都合退職」扱いとなり、予告手当・解雇無効の主張が困難になります(4/11記事参照)。

解雇予告手当請求の手順

ステップ①:解雇通知書・経緯のメモ確保

  • 解雇通知書(または通告メール・録音)
  • 解雇日付の特定
  • 解雇予告の有無・日付
  • 解雇理由の記載(書面で求める権利あり:労基法22条)

ステップ②:内容証明郵便で請求

平均賃金計算根拠を示して請求書面を作成し、配達証明付内容証明郵便で送付。

ステップ③:労働基準監督署への申告

労基法20条違反として申告。労基署は是正勧告を行い、悪質事案では送検事例もあります。

ステップ④:労働審判・少額訴訟

請求額60万円以下なら少額訴訟(1日結審)も活用可能。複雑事案・解雇無効も争うなら労働審判(3回・3ヶ月)。

ステップ⑤:通常訴訟・付加金請求

訴訟では付加金(同額)も請求し、最大2倍の金額を回収。

損害賠償・回収の相場

| 内容 | 相場 |

|---|---|

| 解雇予告手当(平均賃金30日分) | 月給×1ヶ月分前後 |

| 一部予告のみの場合 | 不足日数分 |

| 付加金(訴訟認容) | 予告手当と同額=最大2倍 |

| 解雇無効+バックペイ(主位請求) | 月給×係争期間(数百万〜数千万) |

| 慰謝料(悪質事案) | 50万〜200万円 |

よくある質問(Q&A)

Q1. 解雇予告手当をもらっても、解雇自体は有効なのですか?

A. 細谷服装事件によれば、予告手当不払いでも解雇自体は有効。ただし労働者の選択で解雇無効を主張することも可能。まず弁護士に相談してから戦略を決定しましょう。

Q2. 「懲戒解雇だから予告手当は不要」と言われました。

A. 懲戒解雇=予告除外認定ではありません。労基署長の除外認定がない限り、懲戒解雇でも予告手当の支払い義務が生じます(NEXX事件・サンライズグループ事件等)。

Q3. 退職勧奨を受けて応じてしまいました。予告手当は請求できますか?

A. 自己都合退職扱いだと予告手当の対象外。ただし退職強要として無効化できれば話は別。退職届の経緯次第で詐欺・強要取消主張も可能(民法96条)。

Q4. 30日前予告と予告手当の併用は可能?

A. はい。例えば「10日前予告+20日分の予告手当」のように組み合わせ可能です。

Q5. 試用期間中の解雇でも予告手当が必要?

A. 試用期間14日経過後は必要。14日以内の解雇は予告手当不要ですが、解雇自体の合理性は別途審査(4/18記事参照)。

Q6. 平均賃金の計算にボーナスは含まれますか?

A. 3ヶ月超の期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は除外(労基法12条4項)。月給・諸手当・通勤手当が基礎となります。

まとめ

解雇予告手当は、突然の解雇から労働者の生活を守る労基法の強行的保護です。

1

平均賃金30日分の支払いが原則、不足分は付加金で最大2倍に

2

予告除外認定は厳格運用、懲戒解雇でも原則必要

3

解雇無効と予告手当の選択戦略で回収最大化

「明日から来なくていい」と言われたら、その場で署名せず、まず書面で解雇理由証明書(労基法22条)を請求し、労働問題に強い弁護士に相談してください。

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この記事の監修者

仕事トラブルNavi 編集部(労働問題専門弁護士監修)

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この記事の著者

仕事トラブルNavi 編集部

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