その他2026年5月14日

休業手当(労基法26条)を払ってもらえない|会社都合休業・自然災害・取引先都合での60%補償と全額請求の判例【2026年版】

はじめに

「会社の経営難で来週から自宅待機を命じられた」「取引先のシステム障害でうちの工場も停止、休業させられた」「『自然災害だから無給』と一方的に通告された」「コロナの第10波で営業時間短縮、シフトを大幅減らされた」「親会社の業績悪化で生産調整に入り、月の半分を休まされた」――こうした休業時の賃金トラブルは、コロナ禍以降あらゆる業種で発生しやすい問題となりました。

労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業について、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いを使用者に義務付けています。違反は刑事罰(30万円以下の罰金/120条)の対象であり、訴訟では付加金(同額)まで命じられます。さらに民法536条2項(債権者の責めに帰すべき事由)を併用すれば、賃金全額(100%)の請求も可能です。

本記事では、休業手当の法的枠組み、平均賃金との関係、自然災害・取引先都合・親会社指示・経営難など事案類型別の判定、民法536条2項との使い分け、請求手順を2026年最新基準で詳しく解説します。

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休業手当の法的根拠

労基法26条

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

趣旨

労働者の生活保障。労働者は労務を提供できる準備をしているのに、使用者側の事情で就労できないなら、最低限の生活費は使用者が負担すべきとの考え方。

違反の効果

| 効果 | 内容 |

|---|---|

| 刑事罰 | 30万円以下の罰金(労基法120条1号) |

| 付加金 | 訴訟で未払額と同額の付加金(労基法114条) |

| 強行法規性 | 当事者の合意でも下回れない |

「使用者の責に帰すべき事由」の判断基準

不可抗力との区別

最高裁・労基行政解釈は、使用者として通常払うべき注意義務を尽くしても回避できない事象(不可抗力)と、それ以外の事象を区別。後者は広く「使用者の責に帰すべき事由」に含まれます。

該当する典型例

| 事由 | 該当性 |

|---|---|

| 経営不振・受注減少 | 該当(使用者の経営リスク) |

| 工場の機械故障 | 該当(管理責任) |

| 親会社からの操業停止指示 | 該当(経営判断の結果) |

| 取引先の事情による休業 | 原則該当(ノースウエスト航空事件) |

| 行政指導による営業自粛 | 状況により判断 |

| 大規模自然災害(地震・洪水) | 通常該当せず(不可抗力) |

| 戦争・テロ等 | 通常該当せず |

| パンデミック(コロナ等) | 状況により判断(事業継続可能性で判定) |

「責に帰すべき事由」のメルクマール

  • 事業継続可能性があったか
  • 代替手段(在宅勤務・配置転換)を検討したか
  • 政府・自治体の補助金(雇用調整助成金)申請を行ったか
  • 労働者への事前協議を行ったか

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重要判例

ノースウエスト航空事件(最判昭62.7.17)

ストライキを理由とする他労組組合員の休業につき、使用者の責に帰すべき事由該当性を肯定。労基法26条の解釈の出発点となる重要判例。

池貝鉄工事件(最判昭54.7.20)

部品不足による休業につき、経営リスクとして労基法26条適用を肯定。

米軍三沢基地事件(最判昭53.2.23)

基地閉鎖による休業につき、契約継続義務違反として民法536条2項(賃金全額)の適用を認めた事案。

大津地裁コロナ休業事件(大津地判令3.4.16)

コロナ禍での宿泊業の休業につき、雇用調整助成金の活用可能性を踏まえて労基法26条適用を肯定。

サウンドネットワーク事件(東京地判平25.4.24)

経営難を理由とする一方的な休業命令につき、労基法26条+民法536条2項の双方による全額賃金請求を認容。

三菱重工長崎造船所事件(最判平12.3.9)

労働時間性の判断枠組みを示した判例ですが、休業中の待機義務性の判断にも参照されます。

自然災害・パンデミックの場合

大規模自然災害(地震・洪水・台風)

設備が物理的に損壊し事業継続が物理的に不可能な場合は、不可抗力として労基法26条適用外。ただし:

  • 一時的な停電・断水で短期間で復旧可能な場合 → 該当
  • 関連工場の被災で自社事業に間接影響のみ → 該当

コロナ・パンデミック

厚労省Q&Aによれば:

  • 緊急事態宣言・営業自粛要請に応じた休業は直ちに「不可抗力」とは言えない
  • 代替手段(在宅勤務・出勤調整・補助金活用)の検討が必要
  • 一方的に「無給休業」とすることは原則違法

⇒ 多くの裁判例で労基法26条適用+助成金活用懈怠を理由に休業手当の支払を命令。

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民法536条2項との使い分け(60% vs 100%)

民法536条2項

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。

労務債務の場合、使用者が労務受領を拒んだ=全額賃金請求権が消滅しません。

労基法26条との関係

| 法的根拠 | 補償額 | 範囲 |

|---|---|---|

| 労基法26条 | 平均賃金の60%以上 | 「使用者の責」の広い解釈 |

| 民法536条2項 | 賃金全額(100%) | 「債権者(使用者)の責に帰すべき事由」が必要 |

民法536条2項適用の典型例

  • 違法解雇による就労拒否(バックペイ)
  • 不当な配転拒否
  • 経営判断による一方的休業(サウンドネットワーク事件
  • 経営難でも事業継続努力を怠った場合

戦略的併用

実務では、民法536条2項(主位)+労基法26条(予備)の併用が基本。100%回収できない場合でも60%は確保。

雇用調整助成金との関係

助成金概要

会社が休業手当を支払いつつ雇用維持に努めた場合、休業手当の一部(中小企業最大3分の2、大企業最大2分の1)を国が助成。

労働者への影響

「助成金を申請しない=労働者への休業手当を払わない」という会社対応は、労基法26条違反となります。労働者から労基署に助成金活用懈怠を申告することも可能。

賠償請求の手順

ステップ①:休業命令の書面化

休業の事由・期間・補償の有無を書面で確認します。曖昧な場合は会社に書面交付を求めます。

ステップ②:平均賃金の計算

直近3ヶ月の総賃金÷暦日数で平均賃金算定。月給25万円の例:

  • 平均賃金=750,000÷91=8,242円
  • 1日の休業手当(60%)=8,242×0.6=4,945円
  • 月20日休業の場合=4,945×20=98,900円

ステップ③:内容証明郵便で請求

民法536条2項+労基法26条による全額または60%請求を主張。

ステップ④:労働基準監督署への申告

労基法26条違反として申告。是正勧告→悪質事案は送検も。

ステップ⑤:労働審判・訴訟

請求額が大きい場合は労働審判(3回・3ヶ月)または通常訴訟。付加金で最大2倍を狙う。

回収相場

| 内容 | 相場 |

|---|---|

| 60%休業手当(1ヶ月) | 月給×60% |

| 100%全額賃金請求(1ヶ月) | 月給×100% |

| 付加金(労基法26条認容時) | 未払手当と同額(最大2倍) |

| 慰謝料(悪質な無給休業強要) | 30万〜100万円 |

| 長期休業の累計請求 | 数百万〜数千万円 |

よくある質問(Q&A)

Q1. 「休業手当の代わりに有給休暇を消化しろ」と言われました。

A. 有給休暇は労働者の権利であり、会社が休業手当の代わりに強制消化させることは違法。「会社の都合で休ませる」場合は休業手当で対応すべきです。

Q2. 「自然災害だから無給」と言われました。本当に無給ですか?

A. 事業継続が物理的に不可能な場合のみ無給。部分稼働可能・短期復旧可能な場合は休業手当の対象です。

Q3. コロナの営業時間短縮で出勤時間が減りました。減った分は請求できますか?

A. はい。「一部休業」も労基法26条の対象。減った時間分の60%以上を請求可能。

Q4. アルバイト・パートでも休業手当はもらえますか?

A. もちろんです。雇用形態を問わず労基法26条が適用されます。シフト制でも合意済みシフトの取消しは休業に該当。

Q5. 派遣社員ですが、派遣先の都合で休業です。誰に請求?

A. 派遣会社(派遣元)に請求します。派遣先が原因でも、雇用契約は派遣会社との間にあるため。

Q6. 過去の休業分も遡って請求できますか?

A. はい。賃金請求権は3年時効(労基法115条)。過去3年分まで遡及請求可能。

まとめ

休業手当は、使用者の事情で就労できない労働者の生活を守る最低保障です。

1

労基法26条(60%)+民法536条2項(100%)を併用して回収最大化

2

コロナ・自然災害でも一律に無給ではなく、事業継続可能性で判定

3

雇用調整助成金の申請懈怠は労基法違反として追及可能

「会社が苦しいから仕方ない」と諦めず、まず書面で休業事由を確認し、労働問題に強い弁護士・労基署へご相談ください。

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この記事の監修者

仕事トラブルNavi 編集部(労働問題専門弁護士監修)

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この記事の著者

仕事トラブルNavi 編集部

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