労災2026年4月30日

労災認定を申請する方法|業務上災害・通勤災害の判定基準・会社が協力しないときの対処法【2026年版】

はじめに

「仕事中に怪我をしたのに会社が労災を認めてくれない」「通勤途中の事故で長期休業しているが補償がない」「過重労働でうつ病になったが、業務との因果関係を否定された」――労災(労働者災害補償保険)は、本来すべての労働者を守るためのセーフティネットですが、会社が労災申請に協力しない「労災隠し」や、労基署が業務外と判断する事例が後を絶ちません。

労災が認定されれば、治療費全額・休業補償(賃金の8割相当)・障害補償・遺族補償が国から支払われ、解雇制限(労基法19条)も適用されます。本記事では、労災の判定基準、申請手続き、会社が拒否したときの対処法、不服申立てまでを最新基準とともに弁護士監修で詳しく解説します。

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労災(労働者災害補償保険)とは

労働者災害補償保険法に基づき、労働者が業務上または通勤途上で負傷・疾病・障害・死亡した場合に、国(労基署)が給付を行う公的保険制度です。

| 項目 | 内容 |

|---|---|

| 保険料負担 | 全額会社負担(労働者負担ゼロ) |

| 適用範囲 | パート・アルバイト・派遣・日雇いを含む全労働者 |

| 給付主体 | 国(労働基準監督署) |

| 給付内容 | 療養・休業・障害・遺族・葬祭・介護給付 |

健康保険と異なり自己負担ゼロで治療を受けられ、休業時には賃金の約80%(休業補償60%+休業特別支給金20%)が支給されます。

業務上災害の2要件

業務上災害として認定されるには、業務遂行性業務起因性の2つを満たす必要があります。

①業務遂行性

労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態で発生したこと。

  • 就業時間中の業務行為
  • 休憩時間中でも事業場内にいるとき
  • 出張中・社用車での移動中
  • 会社主催の懇親会・運動会(強制参加)

②業務起因性

災害が業務に内在する危険が現実化したものであること。

  • 職場の機械操作中の事故
  • 業務上の重量物による腰痛
  • 過重労働によるうつ病・脳血管疾患
  • 顧客・第三者からの暴行(業務に関連するもの)

両方を満たす場合に「業務上」と認定されます。

通勤災害の判定基準

通勤災害は労災保険法7条2項に定められ、合理的な経路と方法で通勤中の事故が対象です。

通勤の範囲

| 種類 | 対象 |

|---|---|

| 住居⇔就業場所 | 通常の往復 |

| 就業場所間の移動 | 複数事業所勤務者 |

| 単身赴任先⇔自宅 | 帰省 |

逸脱・中断の扱い

通勤経路から離れたり、通勤と関係ない行為をすると逸脱・中断となり原則として労災対象外。ただし日常生活上必要な行為(最小限度のもの)であれば、復帰後の通勤は対象に戻ります。

| 認められる行為 | 認められない行為 |

|---|---|

| スーパーでの夕食買い物 | 居酒屋での長時間飲酒 |

| 病院での診察 | 友人宅での宴会 |

| 子の保育所送迎 | パチンコ・ゲームセンター |

| 投票・選挙 | 観光地への寄り道 |

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過労死・精神疾患の認定基準

過重労働による脳・心臓疾患、過労うつ病・自死は、令和3年改正の認定基準により判断されます。

脳・心臓疾患の認定基準(令和3年9月改正)

| 基準 | 内容 |

|---|---|

| 短期間の過重業務 | 発症前1週間に著しく過重な業務 |

| 長期間の過重業務 | 発症前1ヶ月に100時間または2〜6ヶ月平均80時間の時間外労働 |

| 異常な出来事 | 発症直前の極度の精神的・身体的負荷 |

なお、深夜勤務・休日のない連続勤務・出張多数等も総合考慮されます。

精神障害の認定基準(令和2年改正)

| 基準 | 内容 |

|---|---|

| 対象疾病 | うつ病・適応障害・PTSD等 |

| 発症前6ヶ月の業務上ストレス | 「強」と評価される出来事 |

| 業務外要因の有無 | 私的トラブルの影響を考慮 |

「強」と評価される典型例:

  • 月160時間超の残業
  • 重大なミス・事故
  • パワハラ・セクハラ
  • 2週間以上の連続勤務

重要判例

| 判例 | 内容 |

|---|---|

| 電通事件(最判平12.3.24) | 過労自殺の業務起因性を認め、企業の安全配慮義務違反を明示 |

| 横浜南労基署長事件(最判平8.11.28) | 業務遂行性の判断枠組み |

| 大分労基署長事件(福岡高判平19.10.25) | 過労うつ病の業務起因性を肯定 |

| 三井記念病院事件(東京地判平24.6.13) | 看護師の過労死を労災認定 |

| 国・札幌中央労基署長事件(札幌高判平25.2.21) | 通勤途上のパワハラ起因事故を労災認定 |

| 西濃運輸事件(名古屋高判平24.3.22) | 上司のパワハラによるうつ病自殺を労災・損害賠償認定 |

申請手続きのステップ

ステップ①:医療機関を労災指定病院から選ぶ

労災指定病院を受診すれば、自己負担なしで治療できます。指定外なら一旦立替払いし、後日全額還付請求できます。

ステップ②:請求書を作成する

| 給付種類 | 様式 |

|---|---|

| 療養補償給付 | 様式第5号(指定病院)/第7号(指定外) |

| 休業補償給付 | 様式第8号 |

| 障害補償給付 | 様式第10号 |

| 遺族補償給付 | 様式第12号 |

ステップ③:会社に証明欄を記入してもらう

請求書には事業主の証明欄があり、会社の押印が必要です。会社が証明を拒否しても申請は可能で、その場合は「事業主証明拒否の理由書」を添付します。

ステップ④:労働基準監督署に提出

労働者の住所地または事業所所在地を管轄する労働基準監督署に提出。郵送・窓口提出のいずれも可能です。

ステップ⑤:調査と認定

労基署が事業主・関係者・医療機関に調査を行い、業務上か否かを判定。複雑事案では3〜6ヶ月かかることもあります。

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会社が労災申請に協力しないときの対処

「労災隠し」の典型パターン

  • 「健康保険を使え」と言われる
  • 事業主証明を拒否される
  • 「うちは労災に入っていない」と説明される(実際には強制適用)
  • 軽微な怪我として処理される
  • 退職勧奨される

対処方法

1

労働者単独で申請可能(事業主証明欄空欄でOK)

2

労基署に「労災隠し」を通報(労働安全衛生法100条違反)

3

健保使用済みなら健保→労災の切替手続きを労基署で相談

4

弁護士に依頼して安全配慮義務違反の損害賠償を併せて請求

労災隠しは労働安全衛生法違反で、会社・経営者個人に罰則(50万円以下の罰金)があります。

認定されなかったときの不服申立て

労基署が「業務外」と判断した場合、3段階の不服申立てが可能です。

①審査請求

処分を知った日の翌日から3ヶ月以内労働者災害補償保険審査官に審査請求。

②再審査請求

審査請求の決定を知った日から2ヶ月以内労働保険審査会に再審査請求。

③行政訴訟

審査請求の決定を経て6ヶ月以内地方裁判所に取消訴訟を提起。再審査請求を経ずとも訴訟可能(裁決主義不採用)。

労災と会社への損害賠償の併用

労災給付は実損害の一部に過ぎず、会社の安全配慮義務違反を理由に、追加で損害賠償を請求できます。

| 請求項目 | 労災給付 | 損害賠償 |

|---|---|---|

| 治療費 | 全額 | 不要 |

| 休業損害 | 8割 | 残り2割 |

| 慰謝料 | なし | 数百万〜数千万円 |

| 逸失利益(後遺症) | 一部 | 不足分 |

労災認定を受けた事実は、安全配慮義務違反訴訟で強力な証拠になります。

よくある質問(Q&A)

Q1. パートやアルバイトでも労災は使えますか?

A. はい。雇用形態を問わず全労働者が労災保険の対象です。会社が「うちは入っていない」と言っても、労災保険は強制適用です。

Q2. 労災で休業中に解雇できますか?

A. できません。労基法19条により、業務上負傷・疾病による療養期間中とその後30日間は解雇制限があります。違反すれば解雇は無効です。

Q3. 過去の事故も今から申請できますか?

A. はい。療養補償給付は2年、障害・遺族補償給付は5年の時効があります。時効内なら遡って請求可能です。

Q4. 通勤中にコンビニに寄って怪我した場合は?

A. 「日常生活上必要な最小限度の行為」と認められれば、復帰後の通勤は労災対象です。寄り道中の怪我自体は対象外。

Q5. 在宅勤務中の怪我も労災ですか?

A. 業務遂行性が認められれば対象です。業務時間中・業務場所(自宅の作業スペース)での災害が要件。コーヒーを淹れに行く途中の階段転落も「業務に伴う行為」として認定例があります。

Q6. 労災と健康保険を同時に使えますか?

A. 同一傷病では併用不可。業務上・通勤途上の傷病は健保の給付対象外(健保法55条)。誤って健保を使ったら速やかに切替手続きをしてください。

まとめ

労災制度は労働者の権利であり、会社の同意は不要で本人が単独申請できます。業務上災害・通勤災害・過労死・精神疾患の認定基準は明確に定められており、会社の「労災隠し」に屈する必要はありません。

1

医療機関を労災指定病院から選び、本人で申請する

2

認定されなかったら審査請求→再審査請求→行政訴訟で争う

3

労災給付に加えて会社への損害賠償(慰謝料・逸失利益)を併せて請求

職場で起きた怪我・病気は、一人で抱え込まず、労働基準監督署と労働問題に強い弁護士に相談することが、確実に権利を守る第一歩です。

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この記事の監修者

仕事トラブルNavi 編集部(労働問題専門弁護士監修)

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この記事の著者

仕事トラブルNavi 編集部

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