残業代2026年5月25日

36協定の残業上限規制を超えた残業命令は違法|月45時間・年360時間・複数月平均80時間ルールと違反企業への対処【2026年版】

はじめに

「月100時間を超える残業が常態化し、過労死ラインを優に超えている」「36協定(サブロク協定)すら結ばれていないのに、毎日のように残業を命じられている」「特別条項があれば青天井で残業させられると会社が言っている」「残業命令を断ったら『業務命令違反』と言われた」「健康診断で異常所見が出たが業務は減らない」「月80時間超の残業が3ヶ月続いており、精神的に限界」――こうした長時間労働・残業上限規制違反のトラブルは、過労死・過労自殺・うつ病発症など労働者の生命と健康を直接脅かす深刻な問題です。

2019年4月(中小企業は2020年4月)施行の働き方改革関連法は、それまで法律上は青天井だった残業時間に絶対的上限を設け、罰則付きで規制しました。さらに2024年4月からは、それまで適用が猶予されていた建設業・自動車運転業(トラック・タクシー)・医師などにも上限規制が適用開始されました。

本記事では、36協定の仕組み、原則上限と特別条項の限界、違反の刑事罰・付加金、残業命令拒否の権利、過労死ラインとの関係、健康障害発生時の対応を2026年最新基準で詳しく解説します。

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36協定(サブロク協定)の仕組み

労基法32条の原則

労基法32条は労働時間を1日8時間・週40時間に制限。これを超える労働(時間外労働)には労基法36条による労使協定(36協定)が必要です。

36協定の要件

| 要件 | 内容 |

|---|---|

| 協定締結 | 過半数代表者(または労働組合)との書面協定 |

| 労基署届出 | 所轄労働基準監督署への届出が必要 |

| 周知義務 | 全労働者への周知 |

| 記載事項 | 時間外労働の事由・対象労働者・延長時間・有効期間等 |

36協定がない場合

時間外労働を命じることは労基法違反(同法32条違反)。6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1号)。残業命令自体が違法なので、労働者は拒否できるだけでなく、強いられた残業の慰謝料も請求可能。

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残業上限規制(働き方改革法)

原則の上限

| 項目 | 上限 |

|---|---|

| | 45時間 |

| | 360時間 |

特別条項の上限

繁忙期等で原則上限を超える場合、特別条項付き36協定が必要。ただし以下の絶対的上限を超えてはならない。

| 項目 | 上限 |

|---|---|

| 年720時間以内 | 法定休日労働を除く |

| 複数月(2〜6ヶ月平均)80時間以内 | 休日労働を含む |

| 月100時間未満 | 休日労働を含む |

| 月45時間を超える月 | 年6回まで |

違反の効果

| 効果 | 内容 |

|---|---|

| 刑事罰 | 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労基法119条1号) |

| 書類送検 | 厚労省「過労死等防止対策推進法」の公表対象 |

| 企業名公表 | 違反企業として公表される |

| 損害賠償 | 過労死・健康障害があれば数千万〜数億 |

適用猶予業種(2024年4月適用開始)

5年間の猶予が終了した業種

2024年3月まで適用猶予されていた業種に、2024年4月から上限規制が適用:

| 業種 | 上限 |

|---|---|

| 建設業 | 一般と同じ(月45時間・年360時間、特別条項あり) |

| 自動車運転業(トラック・タクシー・バス) | 年960時間(一般より緩い) |

| 医師 | 年960時間(多くの場合)、勤務医の連続勤務制限 |

| 新技術・新商品研究開発業務 | 適用除外(健康確保措置義務) |

| 鹿児島・沖縄の砂糖製造業 | 適用 |

「2024年問題」

特に運送業界・建設業界では、ドライバー・建設労働者の確保困難として「2024年問題」と呼ばれる労働環境見直しが進行中。

重要判例

日立製作所武蔵工場事件(最判平3.11.28)

労働者の残業命令拒否につき、36協定+就業規則の合理性があれば残業命令に従う義務ありと判断。ただし、36協定がない・上限超え・健康上の支障があれば拒否可能。

電通事件(最判平12.3.24)

月150時間超の残業に従事した社員の過労自殺につき、会社の安全配慮義務違反として1億6,800万円の損害賠償命令。長時間労働と死亡の因果関係を明確化。

三菱重工長崎造船所事件(最判平12.3.9)

労働時間性の判断枠組みを示した判例ですが、始業前準備・終業後片付けも労働時間として算入されることを明示。

国・北海道社会保険業務局長事件(最判平24.4.27)

精神障害の労災認定での長時間労働の業務起因性を肯定。

NTT西日本事件(最判平20.4.18)

健康診断で異常所見があった労働者への業務軽減義務を肯定。

KDDIエンジニアリング事件(東京地判令1.7.30)

月80時間超の残業に従事した社員の精神疾患につき、会社の損害賠償責任を認定。

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残業命令拒否の権利

拒否できる場合

| 状況 | 拒否権 |

|---|---|

| 36協定なし | 拒否可 |

| 36協定の上限超過 | 拒否可 |

| 特別条項の上限超過 | 拒否可 |

| 健康上の支障あり(医師の意見書等) | 拒否可 |

| 家族の介護・育児等緊急事由 | 状況により拒否可 |

| 残業代の不払い継続 | 拒否可(労基法24条違反) |

拒否を理由とする不利益取扱い

拒否を理由とする懲戒・解雇・降格は、不当として無効化+慰謝料請求が可能。

過労死ラインとの関係

厚労省「過労死等の認定基準」

| 基準 | 内容 |

|---|---|

| 発症前1ヶ月100時間超 | 業務起因性が肯定されやすい |

| 発症前2〜6ヶ月平均80時間超 | 業務起因性が肯定されやすい |

| 発症前1〜6ヶ月の累積労働時間 | 各種疾患(脳・心臓・精神)への影響を判断 |

⇒ 36協定の上限と過労死認定基準は実質連動。月80時間超え・月100時間超えは労災認定の決定的要素。

健康診断との関係

長時間労働者には労働安全衛生法66条の8による医師面接指導が義務。月80時間超の残業者は本人申出があれば面接指導を受けられます。

違反企業への対処手順

ステップ①:労働時間の証拠保全

  • PCログオン・オフ時刻
  • 入退館記録(ICカード)
  • メール・チャットの送受信時刻
  • 業務日報・手書きメモ

ステップ②:労働基準監督署への申告

労基法32条・36条違反として労基署に申告。労基署は臨検(立入調査)→是正勧告→書類送検と段階的に対応。

ステップ③:未払い残業代の請求

詳細は5/1未払い残業代記事参照。過去3年分を遡及請求可能。

ステップ④:健康障害発生時の労災申請

精神疾患・脳心臓疾患を発症した場合、労災申請を労基署に直接提出。4/30労災記事参照。

ステップ⑤:損害賠償請求

会社の安全配慮義務違反(労契法5条)に基づき民事損害賠償請求。電通事件の射程で高額賠償可能。

回収相場

| 内容 | 相場 |

|---|---|

| 未払い残業代(3年分) | 100万〜500万円 |

| 36協定なしの残業に対する慰謝料 | 50万〜200万円 |

| 過労うつ病の労災給付 | 治療費全額+休業補償(給与の80%) |

| 過労うつ病での損害賠償 | 500万〜3,000万円 |

| 過労死・過労自殺の損害賠償 | 1億〜2億円(電通事件以降の判例水準) |

| 健康配慮義務違反の慰謝料 | 100万〜500万円 |

よくある質問(Q&A)

Q1. 36協定があれば月100時間まで残業させられる?

A. 違います。特別条項を結んでいる場合のみ月100時間「未満」まで可能。100時間以上は絶対的違反。さらに複数月平均80時間以下との制約あり。

Q2. 「業界の慣行だから仕方ない」と言われています。

A. 慣行は違法状態を正当化しません。労働基準監督署に申告することで是正勧告を出してもらえます。匿名申告も可能。

Q3. 残業命令を拒否したら「業務命令違反」と懲戒予告されました。

A. 36協定なし・上限超え・健康支障ありの場合は拒否権が認められるため、懲戒は無効。日立製作所武蔵工場事件の射程。

Q4. 自分の労働時間を会社が記録してくれません。

A. 労働時間管理は会社の義務(厚労省「労働時間の適正把握ガイドライン」)。PCログ・入退館記録・メール送受信時刻で自衛を。

Q5. 「みなし労働時間制」だから上限規制対象外と言われました。

A. 裁量労働制・事業場外みなし制でも、深夜労働・休日労働の規制は適用。さらに健康確保措置義務は変わりません。詳細は5/1・5/19記事参照。

Q6. 過労でうつ病を発症しました。労災になりますか?

A. 月80時間超の残業が続いていれば業務起因性が肯定されやすい。労災申請+会社の安全配慮義務違反による損害賠償の二段請求が可能。4/30労災記事参照。

まとめ

36協定の残業上限規制は、労働者の生命と健康を守る最低保障です。

1

原則月45時間・年360時間、特別条項でも月100時間未満・複数月平均80時間以下・年720時間が絶対的上限

2

36協定なし・上限超え・健康支障ありなら残業命令を拒否可能

3

過労死・過労自殺は会社の安全配慮義務違反として数千万〜数億円の損害賠償

「うちは特別」「業界慣行」は通用しません。労働基準監督署への申告・労災申請・損害賠償請求の三段構えで対応してください。労働問題に強い弁護士へ早期にご相談を。

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この記事の監修者

仕事トラブルNavi 編集部(労働問題専門弁護士監修)

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この記事の著者

仕事トラブルNavi 編集部

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